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YUSUKE KAMO マネージャー
TOMOAKI OIKI 外部出向(GO)

No.1タクシーアプリ『GO』。提供するGO株式会社(以下GO)が躍進した理由の一つに、従来の配車方法を見直し、タクシーとお客様のマッチングの”最適解”を導き出すことで最適な配車を行う、「配車ロジック」のリニューアルがあります。このプロジェクトを先導したのが、2020年3月にDeNAに入社した直後からGOに出向しエンジアリングを担う老木智章。本案件で2023年のDeNA社長賞を受賞し、両社内で注目を集めている人物です。

本鼎談は「彼はまさにDeNAが理想とする人物像」と評価するDeNAソリューション事業本部データ統括部統括部長の加茂雄亮のリクエストにより実現。直属の上司で老木を最もよく知るGOの取締役で開発本部長の惠良和隆(2020年4月DeNAより転籍)も加え、老木の働き方・考え方を徹底解剖しました。

oiki_4 左から、加茂、老木、惠良

加茂:
GOを担当するようになって4年になりますね。これまでの業務について教えてもらえますか。

老木:
まず配属後すぐ、AIで配車予約や待ち時間予測をさせるAI予約のシステム開発に取り組みました。

惠良:
当時、GOとしてアプリをリリースする段階で、まずは基本の機能を搭載したアプリをリリースし、そこから約2ヶ月後にAI予約を開始させようとしていました。AI予約は目玉機能でもあったので、老木さんはプロダクトのコアになるようなサービスの施策に入社後すぐに入ってもらった、ということになります。

老木:
AI予約が搭載された後は、より適切に配車をする「配車ロジック」向上に向けたプロジェクトにアサインされました。簡単に言うとタクシーとお客様のマッチングシステムです。マッチングするにあたって、守らなければいけないたくさんの要件やルールを考慮し、システムを開発しました。多数の要件が守れているかを確認するために、品質保証を行うツールも作成しました。たくさんの要件を網羅できているかチェックするテストケースを作りやすくするツールです。

他にも、配車ロジック変更時の性能影響を計測する仕組みも整えました。配車成功率は季節性や天気などに影響を受けやすいので、それらをきっちり考慮する必要があります。これにより、3週間くらいかかっていた性能影響確認が1週間もあればはっきり示せるようになったので、施策のトライがしやすくなりました。

加茂:
そのスピード感を出せた要因は何でしょうか?

老木:
そもそもDeNAはデータドリブンな会社ですから、データもあるしKPIもきっちりチェックしています。GOでの開発時にもそこから逆算して、データ分析のしやすさをメインに設計したところが大きいかもしれませんね。

惠良:
昨今のタクシードライバー不足により需要と供給のバランスが崩れているので、いかに最適なマッチングをするかが最重要項目なんです。この重要性はもちろん、実際のロジックとデータによる傾向など、配車ロジックに関して全てを知っているのが老木さん。そのため、エンジニアはもちろんビジネス職側からもよく相談が届いてますよね。

老木:
配車ロジックはさまざまな業務考案に関わるので多方面からオーダーを頻繁にもらいます。達成したいKPIに最適なアイデアを逆提案したりすることが増えました。

惠良:
この配車ロジックが現在の事業の要となっている、といっても過言ではないですね。これによって、社内のデータドリブン思考がより加速されたし、施策へのリードタイムが大幅に短縮できるようになりました。周囲へ好影響をもたらしています。

加茂:
インターネット内で閉じているサービスと違い、天気などのリアルな要素が含まれてくるので、AIの施策として上手くいっているのか非常にわかりにくいんですよね。だからチリツモの努力というか、変化は少しずつかもしれないですが、それが最終的にビジネスに展開するときに大きいものになる。そこに行くための最初の労力が本当に素晴らしいな、と思います。

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惠良:
開発だけじゃなく、運用もすごいんですよ。配車ロジックはコア機能なだけに、少しでも問題が発生すると影響が大きいんです。リリースしたのが年末に近いタイミングだったので、直後はタクシー需要も相まったせいで障害が発生することが結構ありまして。でも何かが起きたら老木さんが真っ先に反応するし、みんなが気づいてないエラーも老木さんがモニタリングしていて最初にアラートをあげてくれる。やっぱりコアの部分に取り組んだからこそ、品質や運用で問題が出てないか、感度高く見守ってくれていました。

加茂:
ジョインして間もない老木さんが配車ロジックのプロジェクトでイニシアチブを取ることになったきっかけについても伺いたいです。

老木:
アプリをリリースした後で、追加機能については明確な納期が決まっていなかったためか、進行が滞っているように感じました。そこでチームメンバーにその懸念を伝えると、みんなその課題感は持っていたんですよね。じゃあやるか、と。

その日から切り替えて、リードして工程を立て始めました。これもSlerでの経験が大きいですね。お客様のシステムをつくるので、基本的にスケジュールが必達なんです。スケジュールをずらすことはありえない、みたいな業界でしたから。積極的に発言はするタイプですし、前職でDeepLearning事業を立ち上げたこともあるので、自分の中にそういう要素が備わっていたのもあるかもしれません。

領域に捉われない働き方の基盤にあるのは?

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加茂:
老木さんが素晴らしいのは、プロジェクトを自分ごと化して業務を推進できる力があるところだと思っています。自分の得意領域にこだわらず、全体を俯瞰してカバーしてくれるんですよね。しかもDevOpsも含めて推進できる。こういう人材はかなり珍しいんです。

前職でもDevOps体勢でのプロジェクト経験があったのか興味深いです。DeNAに入社とGOへ出向するまでの職歴を教えてください。

老木:
そもそも大学では機械学習の研究室に所属していたのですが、そこで「機械学習は自分には向いてないな」と挫折しまして(笑)。卒業後はSIerに入社し、そこの研究所で働いていました。ただ、研究所といっても予算が少なかったので、銀行に出向してシステムをつくるなどして自ら研究費を捻出していた……という感じです。

高く売れるものをつくるためディープラーニングの研究を始め、それを外販するというようなことをしているうちにSIerが辛くなってきて退職。電機メーカーに転職しました。そこでも研究所に所属し、強化学習の研究を始めました。新しい分野で論文が書けたり、色々と楽しめたりしたのですが、自分がやりたいことは研究より事業貢献だと気づき、事業会社をサーチする中でDeNAに出会いました。

加茂:
他にもいろいろな候補があったと思いますが、DeNAのどんなところに魅力を感じたのですか?

老木:
事業範囲が多岐にわたっているところが一番あります。特にBtoCのモノづくりに集中できるイメージがありました。前職の経験から、BtoBは営業の重要度が高いのに対し、BtoCはモノづくりで真っ向勝負できるように感じていました。

他にも、DeNAは機械学習に強いイメージがあったので、入社後も先駆者に学んで自分も強くなりたい、切磋琢磨したい、という気持ちも大きくありました。

加茂:
研究より事業貢献に着目する感覚は、DeNAのAI技術開発部で活躍しているエンジニアに多い傾向です(笑)。計画的に集めていたわけではないのですが、気づいたら、事業へのワクワク感が理由で入社しました、というエンジニアがたくさんいる。

惠良:
事業会社を志すエンジニアには大体そういうところがありますよね。研究はタイムスパンが長いし、成果がプロダクトに反映されるまで10年とかかかる。もちろん、自分ががんばった成果が世の中に認知されるまでに時間がかかるし、下手すると認知されないこともある(笑)。DeNAには、もっとクイックにプロダクトに反映できる仕事がしたい、というエンジニアが多いですよね。

老木:
スピード感、ありますよね。また、DeNAは自社でサービスを持っていますし、それぞれの事業のKPIを理解した上で、保持しているデータを自由度高く利活用しDelightに繋げられる機会が多くあるな、と。GOにも同じような文化があるので、データドリブンでものごとを進めていけるようになっているので、今働いていてすごく楽しい、というのが率直な感想です。

加茂:
AI技術やアルゴリズム技術をどう事業に適用させていくか、「スピード感を持って」行動できることは非常に大事になりますね。どれだけスピード感を出せるかというのは、どれだけ自分ごと化できるかということ。そのマインドを持っているかどうかが、今後のエンジニアを求めるときに見るポイントになるんじゃないかな。

自分ごと化して推進していく力や責任感をどうやって生み出せたのか

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加茂:
老木さんは事業やプロジェクトを、自分ごと化して推進していく力や責任感が高いと思います。それについて教えてください。

老木:
責任感についてはSIerにいた経験がかなり影響していると思います。SIerでは障害が一番の責任問題になるんです。だからこそ障害には一番誠意を持って当たらなければいけない、というイメージがあるので、起こさないように細心の注意を払いますし、起こしてしまったら全力でカバーすべき、という意識が強いですね。

加茂:
老木さんのそもそもの領域はアルゴリズム設計やデータ分析ですよね。ただ、その専門領域にこだわることなく全体にコミットしている。ここも意識しているのでしょうか。

老木:
これに関しては機械学習の研究論文を書いていた時のことが大きいですね。論文は「精度86%が88%になったら偉業」みたいに数%の違いが大きなインパクトになるんです。ただ、研究の上ではすごいのですが、「その2%は運用でカバーできるのでは?」と思ってしまうときがしばしばありました。そういったころから、自分の領域を突き詰めて数%の成果を得るより、全体をカバーした方が強いインパクトを出だせるだろう、と考えて取り組みました。

惠良:
老木さんは、確固とした自分の専門性は持っているのですが、「目的を達成するための手段」として割り切っているのかな、と思っています。だからこそ専門外のこともガンガンやるし、領域に閉じていないというか。

老木:
そうですね。実は、新卒の就活の時は専門性を大事にしたいと言っていたんです。でも働いていくうちに、専門性だけでやっていくのは難しく感じました。例えば、強化学習は今でこそ花形ですが、僕が始めた頃は全くそんなことなかったんですよね。そういった環境条件や事業の方向性によって専門的に突き詰めた成果の価値が変わってしまう。そこで全体感を見られたほうが「潰しが効く」な、と(笑)。

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加茂:
なるほど。今のAI技術の進化スピードを見ていると、専門領域で突き詰めていくスペシャリストはもちろん大事なのですが、老木さんのようにバランス感を持ってさまざまなことに取り組む人も今後はより重要になってくると思います。

マネージメント側も専門性のある人が輝けるように、アサインを采配するようにしています。でも、運要素というのはどうしてもありますよね。外圧だったり外的要因だったりが絡んで、コントロールしきれない部分が残る。そんな中でも老木さんのように自分で運命を切り開いていく、必要な作業は積極的に取り組む、ということをできる人は本当に強いな、と思いました。

惠良:
周辺のエンジニアが「あ、エンジニアはこんな風にビジネス側に頼られるんだ」と目の当たりにできたのは、かなりいい機会だったのではないかな。一緒にモノづくりをするチームですが、エンジニア側とビジネス側のコミュニケーションが難しいことは多々あります。そこの垣根を感じさせずにコミットする老木さんの存在は既に、目指すべき1つのロールモデルになっていると思います。

加茂:
DeNAの社員が直接老木さんと接する機会はあまりないんです。でも、GOで活躍して、かつ専門性あることを成し遂げ、社長賞まで受賞されたのは、組織戦略的には相当インパクトがあったと思っています。

マネジメントをする立場としては、ビジョンやゴールを明確にする必要があるのですが、老木さんがどういう取り組みをしていたのかを仔細に紹介することで、どういう人物をロールモデルにすればいいのかを提示することができました。

惠良:
楽しむためには事業のことをよく知る必要がありますが、せっかく事業会社で働くのだから、モノづくりを存分に楽しんで欲しいですね。また、老木さんのように、事業にとって今は何が大事か、何が求められているのかを自分ごと化して考えて動ける人が増えると嬉しいですね。老木さんは一緒に働く人のビジョンはありますか?

老木:
エンジニアはオファーされた要件をつくることが多いのですが、そこを直せばビジネス側のKPIが劇的に改善するはずなのに改善されていないポイントを感じることが少なくないんです。なので「こういう機能をつくろうぜ!」と提案できる人と仕事をしたいです。

加茂:
私は「健全な対立」という言葉が好きで普段からよく使いますが、対立した結果、互いに化学反応を起こしてより良いものが生まれるならどんどん対立してくれて構わないと思っています。そういう人材は課題も提案も両方できるだろうし。ブレイクスルーが起きやすいと考えているので、互いに意見を戦わせやすい場をつくっていきたいですね。では最後に老木さんの今後の目標やキャリアについて教えてください。

老木:
「何かしら事業インパクトを出したい」という想いが常に中心にあります。そこに対し、データ分析は有利だと考えていますが、どういうポジションでどんなキャリアを築くかのベストはまだ模索中です。今できる最善を尽くすことを続けていくことで、見えてくるのかなと。


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